気温や物体の温度を知るためには、正確に測定する機械が必要となる。暮らしの中で欠かせない役割を果たしているのが、温度計である。温度を知るという一見簡単なことにも関わらず、その仕組みや構造にはさまざまな工夫がなされ、実は多岐にわたる種類が存在している。温度計は、測りたい対象の温度に応じて最適なものが選ばれる。最も古典的な方法は、液体の膨張や収縮を利用したものだ。
特定の液体は熱せられると膨張し、冷やされると収縮する性質がある。この性質を利用して、細長いガラス管に液体（かつては、水銀やアルコールなどが用いられていた）を封入し、温度が高くなると液体が上昇し、低くなると下がる仕組みが作られてきた。目盛がついた細い管を観察することで、液体の高さから温度を読み取ることができるこの仕掛けは、原理こそ単純であるが精度を高めるには多くの配慮が必要だった。時代が進むと、液体の代わりに金属の膨張と収縮を用いる作り方も開発された。たとえば、金属の棒やバイメタルと呼ばれる異なる膨張率を持つ二つの金属の組み合わせなどが使われる。
これら金属の部品は温度変化によって伸び縮みするため、その動きを針や目盛に変換して温度を示すことができる。そして現代において、主役となるのがセンサーを搭載したデジタル温度計である。電子機器や各種製造現場、医療の現場ではセンサー式の温度計が広く利用されている。これは、特定の金属や半導体材料が温度によって電気的性質（抵抗や電圧など）を変える性質を利用し、それを計測機械で数値化して表示するものである。測定範囲が広く、応答も速い。
さらに、目視せずにデータを自動的に記録したり、遠隔地から複数の場所の温度を同時に監視したりすることも可能だ。センサーの小型化や高精度化が進み、工場や研究室、冷蔵庫や空調機器に搭載されるなど、あらゆる分野で欠かせない存在となっている。また、家庭でよく目にするものとして体温計や室内外気温計がある。体温計は主に体の表面や内部の温度を測るために使われ、体温を素早く正確に測るために、電子的なセンサーが内蔵される例が大半である。液体式の場合も長年親しまれてきたが、今ではだいたいデジタルタイプが主流といえる。
室内外の気温計も従来のアナログ型に加えて、測定結果をデジタルで表示するセンサー式の機械が普及している。一方、産業や研究開発の現場では、より特殊な温度計が活躍している。たとえば放射温度計は、赤外線の放射量から離れた場所の温度を非接触で測定できる優れものだ。これにより、高温の炉や極低温の実験装置、動いている物体の温度も安全かつ正確に把握できる。食品加工、金属加工、半導体製造などの現場では、品質管理に不可欠な機器である。
温度計は医療分野でも不可欠な存在となっている。例えば手術室や懸命な管理を行う病棟では、わずかな体温の変化が患者の状態を左右するため、高精度な機械による連続モニターが行われている。注射や薬品も適切な温度で保存されているかどうかを厳密にチェックするために温度計が常備されている。新しいセンサー技術では、小型で高感度な素子が開発されており、極めて細かな場所や狭い隙間に設置できるモデルや、数秒で応答するなど測定スピードが格段に向上しているものもある。これによって、測定者の手間を大きく減らし、人の健康管理や産業製品の精密な品質管理、安全管理にも大きく貢献しているのである。
適切な温度の維持は、暮らしや産業、医療だけでなく科学の基盤でもある。その支えとなっている温度計は、測定する対象に応じて、設計や使い方、仕組みが細かく工夫されている。現代の温度測定は、もはや手動で目盛を読むものから自動記録や遠隔監視、ネット経由でデータ共有まで、多様な機能をもつ機械として進化した。材料、形状、反応速度、コスト、測定範囲といった多くの要素が開発時に考慮され、その成果が日常の安全と安心を支えていると言える。温度計は単なる道具のひとつという以上の役割を帯びてきている。
目に見えない温度の数字化による「見える化」は、環境の変化や人の体調、機械の状態変化をすばやくとらえ、効率的な対応へと導いている。これまで誕生したさまざまな温度測定の機械やセンサーの進歩は、人の活動とものづくり、そして健康な暮らしを守る大きな柱となったと考えられる。今後もますます精度と使いやすさが求められ、多様な分野でその存在感は増していくに違いない。温度計は私たちの暮らしや産業、医療分野において重要な役割を果たしている機器である。温度測定の原理は、液体や金属の膨張や収縮を利用した古典的なものから、近年主流となっているセンサーを用いたデジタル方式まで多岐にわたる。
ガラス管に封入された水銀やアルコールが温度に応じて上下する仕組みや、バイメタルなどの金属の物理的変化を利用した方式は、シンプルでありながら高い精度を求めて多くの工夫が凝らされてきた。現代では、温度によって電気的性質が変化するセンサーを利用し、迅速かつ広範囲の温度測定を可能にするデジタル温度計が広く使われている。家庭用の体温計や室温計も多くがデジタル化し、家庭内外の温度管理が容易になった。また、産業現場や研究開発の分野では非接触で温度を測定できる放射温度計など、高精度かつ特殊な温度計が品質管理や安全管理に不可欠となっている。医療現場では、患者の体温変化を正確に把握するための高度な温度管理が実施されており、温度計の精度と応答速度が特に重要視されている。
近年は小型・高感度なセンサーの進化により、狭い場所や素早い変化にも対応できる製品が登場し、さまざまな分野での利便性と安全性が向上している。温度計の進歩は、私たちの生活や産業の安全を守る基盤となっている。